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本日8月29日発売の日本唯一のラジオ専門誌「ラジオマニア2023」に、「Chat GPTが教えてくれた〜Philips TEA5767を使用したFMステレオチューナーの製作」という自作記事を書きました。

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この記事のきっかけは、Chat GPTに「DSPラジオチップで音質の良いものはどれでしょうか?」という質問を投げたことから始まりました。Chat GPTからは3つのおすすめチップを紹介され、その中の一つがPhilips社のTEA5767でした。

当方はPhilips社のLHH500というCDプレーヤーをもう30年以上も愛用しています。またPhilipsはクラシックの名門レーベルで、バロック音楽でも数々の高音質でマニアックなリリースを行っています。(レオンハルト、ブリュッヘン、コープマン等々) そんなこともあって当方はPhilips社の製品には特別な思い入れがあり、その「ヨーロピアン・サウンド」ともいえる高品位でまろやかな再生音質の大ファンなのであります。

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そんなPhilips社が開発したFMラジオチップTE5767ですが、今まで全くその存在を知らず、完全にノーマークでした。Philips製というだけで否が応でも期待が高まります。早速調査を開始しその音質と機能を確認するために、FMチューナーを作製してみました。

TE5767はコントローラーからI2C等でコマンド制御するタイプのICで、RFからステレオ・オーディオ出力までを1チップでサポートしています。実はChat GPTの回答では本チップはDSP構成としていましたが、RFからAFの信号処理は全てアナログで行われていました。当方はアナログ構成の方が好みですし、デジタル制御可能なアナログチップということで、むしろ願ったり叶ったりです。

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記事ではハードウェアの作製方法とSeeeduino XIAO SAMD21コントローラーのプログラム(Arduino C++)の解説をしています。最後にDSPタイプの代表格である、Si473xシリーズとの再生音比較を行っています。

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はたして当方が大ファンであるPhilips社製チップのサウンドはいかに? またChat GPTの判断はどうだったのか? 結果はぜひ記事をご覧いただければと思います。

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1月30日に発売された「ラジオ受信バイブル2023」に「心地よいAM・FMサウンドを目指した!〜ICF-P37の基板を使ったアナログ・ホームラジオの製作」という製作記事を書きました。


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現在市販されているラジオはDSPによるデジタル化が進んでおり、旧来のアナログタイプのラジオは消えつつあります。デジタル化により高S/N・低歪み化などスペックの向上も実現でき、無調整で所定の性能が実現できるため大幅なコストダウンが可能になったことが主な要因です。加えてアナログタイプで不可欠なバリコンやIFTなどの可動部品の国内生産が終了して入手困難になったことも大きく影響しています。

ただこのデジタル化により消費電力が増えて、バッテリー駆動のラジオでは稼働時間の低下が問題になってきます。またCDやデジタル配信の時代になってもアナログLPレコードやカセットテープがリバイバルし、いまだに真空管アンプがもてはやされているように、アナログにはデジタルにはない独特の魅力が再生音にあることも事実です。

このような状況の中、SONYが発売したポータブルラジオ:ICF-P37は、現在主流となっているデジタル・DSP構成を採用せず、アナログのSCF(スイッチド・キャパシター・フィルター)による新開発のチップを使用して構成した意欲的な製品となっています。
これにより信号処理は全てアナログですが、上記のバリコンやIFTを使用せず、制御もデジタルで行えかつ消費電力を抑えることにも成功しています。
(ラジオ受信バイブル2022で紹介記事を書いています)
またIFのフィルター帯域を旧来のアナログラジオと同様なシェープとすることで、特にAMでは聞き取りやすいまろやかな音質を実現しています。
そこでこのICF-P37で使用されたラジオICのアナログな特徴をさらに拡張する、新しいタイプのアナログ・ホームラジオを作製してみました。本機は以下のような特徴を持っています。

■ICF-P37の基板をそのまま流用し、新開発チップのSCFによるIFフィルターによるアナログの良さを持った柔らかい良音質を実現。
■スピーカーにFostexのかんすぴ(P650-E)を使用。ホームラジオらしい低音域の豊かな聞きやすく心地よい再生音。
■チューニング用可変抵抗に10:1の減速比を持つ精密型ポテンショメーターを使用。チューニングのしやすさが格段に向上。
■アナログ電流計による見やすい周波数表示を実現。回路はオペアンプを使用しノイズの影響を回避。
■本体には無印良品のモップケースを使用。ドイツ・ブラウン社の名機を模したモダンなデザイン。

デザインの肝となる周波数表示にはアナログ電流計を使用し、オペアンプによる変換回路を実装しています。これにより特にデジタルノイズに弱いAMへの影響なしに見やすい表示を実現しています。

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記事では実際の製作方法の解説と、音質に定評のあるDSP機:ソニーICF-M780Nとの再生音比較を掲載しています。DSP機と一味違うまろやかで聴き心地の良いホームラジオとなっており、非常に気に入っています。

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ラジオマニア2022に書いた自作・製作記事の2本目は、「FMトランスミッタとラズパイ・Volumioで作る高音質自宅FM放送局」です。

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当方はお風呂に入る時に必ずラジオを聞いているのですが、お風呂場は一般的に電波受信状態が悪く、良い状態でラジオを聞くことは難しくなっています。またお風呂に入る時に聞きたい番組がないことも良くあります。

それで室内にFMトランスミッタを置くことを思いつき、使用したのがAitendoで販売しているデジタル制御型のFMトランスミッタ・モジュールです。このモジュールはUSBオーディオデバイスとしてデジタルでPC等に接続可能で、非常に高音質です。そこでラズパイにこのモジュールをUSB接続し、定評ある音楽再生プラットフォームであるVolumioをラズパイにインストールして、WiFI接続でコントロールできるFM放送局にまとめてみました。

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Volumioは各種のデジタル音源の再生機能の他に、全世界のWebラジオを再生できる機能があります。これを利用して、このFM放送局経由で室内のラジオやFMチューナーでそれらを高音質で楽しむことができます。またApple Airplayでの接続も可能で、ラジコの再生も可能です。

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当方は70〜80年代のFMエアチェック・黄金期に作られたFMチューナーを複数台所有していますが、ワイドFMに対応していないので使用用途が限られていました。本機は任意の周波数で送信できるので、高音質なビンテージFMチューナーがその再生機として蘇りました。

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日本はラジオ局の数が他の国に比べて非常に少なく、海外に行った時には羨ましくてしょうがなかったのですが、本機による「新しい周波数」が増えて一気に世界が広がった感があります。例えばBBCを自宅のラジオで聞いていると、まるで現地でそれを聞いているかのような気分になってきます。

本機の詳しい製作方法は記事をご覧ください。

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8月30日に発売された日本唯一のラジオ専門誌「ラジオマニア2022」に記事を2本書きました。1つ目はM5Stackをコントローラに使用したFMステレオラジオの製作記事です。

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過去にM5Stackを使用したラジオを作って記事でも紹介した(ラジオ受信バイブル2019)のですが、受信時のS/Nに若干不満がありました。本機では、シリアル制御タイプのDSPラジオモジュールを使用し、RFノイズ対策をしていないM5Stackのような汎用のコントローラーを使用しても良好なS/Nが得られています。

またオーディオライン出力には15kHzカットオフのLPFを入れて雑音歪率の改善を行い、音質の向上を図っています。

GUIは昔のアナログチューナーのようなスケールや、マッキントッシュ風にブルーにしたシグナルメーターを具備し、ロータリーエンコーダーで選局動作を行います。ソフトウェアはArduino IDE /C++で書かれています。

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外観は以前使用して気に入ったニトリのNOSETE2・ティッシュケースを使用して、ドイツ・ブラウン社のモダンデザインを模したものにしています。

バッテリーにはダイソーで見つけた5000mAh:550円のモバイルバッテリーを使用しています。こちらにはモバイルバッテリーで一般的な低電流時のシャットダウン機能が無く、連続使用が可能になっています。またサイズも小型で、ちょうど本機のケースの後ろにぴったりと納まっています。

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ということで本機は、S/Nの良い良音質、使いやすく見やすいGUIを具備し、感度などのRF性能も良好で、日常的に気楽に使用できるFMステレオラジオになっています。ただ良いことばかりでは無く弱点もあるのでその辺りは記事で説明しています。

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2021年8月に発売された日本唯一のラジオ専門誌、三才ブックス「ラジオマニア2021」に、「食券ボタンで選択する〜券売機型FMラジオ」という製作記事を書きました。

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最近巷ではカプセルトイ、いわゆるガチャガチャが注目され人気が高まっています。非常に精密な模型やフィギア、ミニチュアがラインナップされてきて、大人でもこれにハマる人が急増しています。

そんな中見つけたのが「食券ライトマスコット〜おかわり〜」です。これはラーメン屋や社食などにある「食券・券売機」のボタンを忠実に再現したものです。面白いのは単なるボタンの形の再現だけでなく、白色・赤色の2色のLEDが点灯する機能がある点です。そこで今回はこの食券ボタンの機能をそのまま生かして、これを放送局のプリセット選択に利用した券売機風のFMラジオを作成してみました。

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「食券ライトマスコット」ボタン6個を前面パネルに配置して、券売機っぽい雰囲気を出しています。このボタンにラジオのプリセット・選局の機能を割り当てました。例えば食券ボタンの「カツ丼」を押すとTokyo-FM(80.0MHz)が選局されます。
券売機のお金を入れて選択する動作をグレーのプッシュスイッチで真似ています。これを押すと食券ボタンが全点灯して選択モードになります。ボタンを押すと「売り切れ」の赤色LEDが点灯して他は消灯し、ラジオ局が選局されます。

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本体はニトリのウォールシェルフに実装しています。全体の制御には最近注目されている「ラズパイPico」を使用してみました。食券ボタンの押下検出・LED点灯、OLEDディスプレーへの情報表示、ラジオユニットのリモート制御を行っています。プログラムはArduino IDEのC++を使用しています。ラジオ部分はFMステレオで、スピーカーはダイソーの300円USBスピーカーをモディファイして使用しています。

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今回初めてラズパイPicoを使用してみましたが、GPIOポートが多数利用でき、プログラムの書き込みもPCのUSBから直接行え、550円という低価格で非常に気に入りました。あと本機はバッテリー動作ですが、Picoの電源入力が5.5Vから1.8Vという広い動作範囲を持っており、バッテリー電圧が低下しても動作可能なため非常に使いやすいです。
そしてソフトウェア開発環境で使い慣れたArduino IDEが利用出来る点もポイントが高く、過去のプログラムや幅広いデバイスのライブラリー(例えばOLEDディスプレー)がそのまま利用できます。

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完成した本機ですが、ウッドシェルフのモダンな外観に「カツ丼」「ラーメン」といった食券ボタンのミスマッチが非常に気に入っています。
また「そんなのは嫌だ!」という方は、ボタンのラベルを自分で作って入れ替えれば「正統派バージョン」に変更することもできます。
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記事では食券ボタンのモディファイ方法やハードウェア、ソフトウェアの詳しい作成方法を解説しています。
動作の様子はビデオでご覧いただけます。

三才ブックス「ラジオマニア2020」、2本目の記事は「AMの音質にこだわった、アナログラジオの製作」です。

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最近メーカー製のラジオは、デジタル処理・DSP化が進んでいます。これにより稼動部品(バリコン、IFT)を無くし、高性能かつ高再現性、低価格を実現しており、一見良いことばかりのように見えます。しかし実際の製品のレビューでは、AMについて「音がこもっている」という不満が多く聞かれます。DSP化によってスペックは確実に向上しますが、これは一体どういうことなのでしょうか?

記事ではAMにおけるIF帯域と音質の関係を解説し、あえてアナログフィルターを使用した構成を使った「音の良いAMラジオ」の作製について解説しています。

参考にしたのはSONY製(十和田オーディオ製)でAMの音質に定評があった、ICF-801(廃番)の構成です。これと同じSONY製ラジオICとパワーアンプICを使用し、音の決め手となるスピーカーには木製箱型のフォステックス「かんすぴ」を採用して、AMの高音質化を目指しています。

ラジオの外箱には無印良品のモップケースを利用しています。右側にラジオ回路の収容スペースを残して、かんすぴP-650をぴったりと納めることができます。

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無印良品らしいセンスの良いグレーカラーで、価格も450円と自作用のプラケースよりはるかに低価格で調達可能です。

バリコンによるチューニングをスムーズに行えるよう、バーニアダイアル(減速装置)を利用しています。真空管時代の部品で古臭い外観なので、ダイヤル表示部分を自作してそれを見えなくしています。こちらも無印良品のクリーナーを利用しています。

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記事の最後には、ソニー現役の高音質DSPラジオ、歴代の高音質アナログAMラジオとの音質比較を行っています。
本機は高音質AMの再生を達成できたのか? はたしてその結果はいかに?

ぜひラジオマニア2020本誌でお確かめください!

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2020年8月27日発売の、日本唯一のラジオ専門誌・三才ブックス「ラジオマニア2020」に2本記事を書きました。

1つ目は「レトロモダンなデザインとアナログ表示にこだわった〜ステレオDSPラジオの製作」です。

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自作機器の最大の弱点はそのデザインです。通常は市販のアルミケース等を使って作りますが、その仕上がりは「いかにも自作」といったものになりがちです。

今回は全国どこにでもある某日用品ショップの「あるもの」を使い、モダンデザインの巨匠・ブラウン社ディータ・ラムスによるラジオデザインのテイストを取り入れて作製しました。ブラウン社の歴史的名器であるSK2と、最近あまり見ることが無い横長のデザインを持つT52を参考にデザインを決めています。

この「あるもの」を使うとなんと6色のカラーバリエーションが実現できます。今回は明るいターコイズブルーをメインカラーに作製しましたが、ブラウンやレッド、ピンクなどのレトロモダンなカラーも選べます。この「あるもの」は非常に低価格ですがとても質感が高く、ラジオ完成後はこれが元は何の用途だったかはまったくわかりません。

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あと、ラジオの意匠でデザインの要となる「周波数表示」には、アナログの電流計を応用しました。前回はArduinoを使い、ソフトウェアによるPWM制御で電圧計を駆動しましたが、今回はシンプルにオペアンプを使ったアナログ回路で機能を実現しました。

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ステレオスピーカー部には、これまた全国にある某xxx円ショップで入手可能なあるものを使用しています。ネットでとても300円で入手できるとは考えられないくらい高性能!と話題になっています。

ということで最小限の手間と工作で、実用性に優れたレトロモダンデザインのステレオラジオが自作できます。さて本体その他に何を使って本機を作製したか?は、ぜひ「ラジオマニア2020」本誌でお確かめください!

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全国書店、アマゾン等で入手可能です。

 前投稿で紹介した、ラズパイを使ったホームラジオ・デスクトップオーディオシステムですが、FM電波を受信するラジオ機能の部分で、ラズパイの雑音の影響を受ける事や、外部アンテナの接続が出来ない等の問題がありました。
今回その部分を改善して、ほぼ満足のいく形に仕上げる事が出来ました。

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完成したラズパイ・ホームラジオ・デスクトップオーディオシステム

 具体的には使用しているSparkFunのFMラジオボードを、アンテナにヘッドフォンケーブルを使用しないタイプのものに変更しました。このボードのラジオチップは同じSi4703が使用されており、ソフトウェアの変更は全く必要ありませんでした。オーディオ部はヘッドフォンアンプのチップが削除されていますが、出力はラインレベルで出ているので、本機ではこちらの方が使いやすいです。

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SparkFunのSi4703 FMラジオボード

 それからラズパイのボードから出力される高周波ノイズの影響を出来るだけ小さくするため、このFMラジオボードを背面のラズパイが入っているBOXから、前面パネル側に移動しました。

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Si4703ボードを前面パネルに移動。基板を作り替え

 ボードのアンテナ端子には、75Ω同軸を最短で接続し、インピーダンス変換バランを介して300ΩのT型フィーダーアンテナに接続しました。アンテナは室内壁面に適当に配置しましたが、簡易的に付けたホイップアンテナとは比べ物にならないくらい受信レベルが上がり(33→55dBμ FM-Tokyo)ラズパイからのノイズの影響もほとんど気にならなくなりました。やはりインピーダンス整合は重要です。

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Si4703ボードのアンテナ端子に75Ω同軸を直結

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Tokyo-FM 80MHz受信中。受信レベルは55dBμに向上

 それで、本機はRadikoのインターネットラジオ受信機能も付けたので、同じ放送をFM電波とRadikoで聞き比べてみました。RadikoはHE-AAC(High-Efficiency Advanced Audio Coding)という方法で圧縮され、そのビットレートは48kbpsです。普通MP3とかで音楽的に聞けるのは128kbpsくらいまでなので、このHE-AAC 48kbpsはそれよりもかなり低ビットレートで送信されている訳ですが、意外と帯域は延びている感じがします。このホームラジオではDAコンバーターにハイレゾまで対応できるHiFiスペックのものを使用したので、それも要因としてはあるかと思います。

 FMラジオモジュールとRadikoの音質の比較ですが、受信レベルが十分に高い場合は、はっきりとFM電波の方が高音質で聞きやすいことがわかります。Radikoは一聴してS/Nが良い感じがするのですが、音に深みがなく薄っぺらいのです。これはやはり圧縮率が高いため、データ量が少ないので致し方ないかと思います。むしろこの低ビットレートでかなり良好な結果を出しているなあと思います。FM放送ですが、まあ昔からケンウッドやアキュフェーズの高級FMチューナーから出てくる音は非常に評価が高かったし、特にNHK-FM放送はクラシックのライブ放送などは高音質で定評がありました。
今回使用したSi4703チップは、スペックを見るに高級FMチューナーには及びませんが、最新のDSP技術を使っており、豆粒大のチップなのに中々の実力を持っている事が実感できました。このようなピュアHiFiとは異なるホームラジオでも、FM変調電波の優位性がはっきりしたので、苦労してFMラジオ再生機能をつけたかいがありました。

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Si4703 FMラジオチップのブロックダイアグラム
ダイレクトコンバージョン+DSPで構成

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かんすぴの背面にマウントしたBOXに、ラズパイ、DAC、電源、オーディオアンプを実装。FMロッドアンテナは結局未使用

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最終的なシステムのブロックダイアグラム

以上でほぼ満足の行くホームラジオ・デスクトップオーディオシステムが完成しました。まったりとしたラジオサウンドは、作業の邪魔をしないので、ながら聞きに最適です。またAirplay経由で再生する、Jazzボーカルやリュートのソロは、中々に魅力的なサウンドを聞かせてくれます。使用したかんすぴ:8cmフルレンジスピーカーの良さも、それに大いに貢献していると思われます。

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ラズパイ自作シリーズ第3弾、ホームラジオ&デスクトップオーディオシステムがほぼ完成しました。

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Raspberry piを使用したホームラジオ&デスクトップオーディオシステム

前作ったものは、ラジオというよりはアンプ入りスピーカボックス程度のものだったので、今回Raspberry piを使って本格的な「ホームラジオ&デスクトップミュージックシステム」を作成しました。
以下のような仕様・機能特徴を持っています。

  • Fostexかんすぴを使用して、低音域が充実した理想のホームラジオサウンドを実現
  • Si4703/DSP FMチップをラズパイから制御してFMラジオ放送(ワイドFM対応)受信
  • Rajiko/らじる等のインターネットラジオ再生機能を追加。プリセットされた各局をワンタッチ再生可能
  • Apple Airplay再生機能。iTunesやiphoneから高音質で音楽再生可能
  • DACモード。Raspberry piのlinuxサウンドアプリ(例えばVLC等)から再生可能

以前ホームラジオについてブログに書いたのですが、充実した低音域を再生できる事がホームラジオ的な心地よいサウンドを生み出すために重要である、という点に触れました。
http://lute.penne.jp/thumbunder/?cat=44 (ホームラジオ(1)~(3)参照)

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Fostexかんすぴ前面にパネルを付加。I2C液晶ディスプレー、モード切り換え用ロータリーSW、音量調節VRを設置。パネルは15mmのポストをかんすぴに付けて固定

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ブラウンSK2を意識した外観

以前作ったものと同様に、Fostexのかんすぴを使用してそれを実現しています。1サイズ大きい8cmフルレンジ対応のものを使用しました。
全面パネルには同様にタミヤのユニバーサルプレートを使用して、ブラウンのSK2っぽい外観を目指してみました。つまみは機能選択のロータリースイッチと音量調節用の2つです。赤いタクトスイッチは選局用で、I2C接続された液晶パネルに各種情報を表示します。
パネルとかんすぴの間の隙間には、布製のベルトを巻き付けています。ゴムベルトを入れてテンションを付けフィットさせています。色を変えたベルトで、気分によって簡単に交換できます。

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かんすぴ背面に取り付けられる回路部。左はラズパイでPHAT DACとユニバーサルボードを実装。右の赤い基板がSi4703 FMラジオ基板。その下が1Wアンプと低雑音電源ボード。

コントローラーはもちろんラズパイです。手持ちの都合でラズパイ2を使用していますが、最新の3で動作は問題ありません。
ケースはタカチのLC165H-Nで、かんすぴの背面にぴったりと収まります。

ラズパイのGPIOコネクターに、回路実装用の秋月のユニバーサル基板をのせ、その上にPHAT DACという小型のDACボードを取り付けています。
このボードは24bit/192kまでのハイレゾ再生に対応可能な、中々に高性能なものですが、非常に小型です。(元々はラズパイゼロ用)
こちらはAirplayと汎用デジタルソース(Radikoなど)再生に使用しています。

秋月のラズパイ用ユニバーサル基板は、外部電源の使用が可能でUSB接続が不要になります。早速それを使ってみましたが、5V/3.3V/GNDのパターンが独立して設けられており非常に使い勝手が良いです。値段も150円と非常にリーズナブルです。

かんすぴを駆動するアナログアンプは、以前使用して良かった秋月のHT82V739 DIPサイズアンプ基板を使用しました。小型でも出力は1W程度あり、電源電圧が3.3Vからでも動作できるので非常に使いやすいです。
それでこれを単純に共通電源を使って組んだところ、ラズパイと電源からのデジタル低周波ノイズの回り込みによる影響を受けてしまいました。そのため、絶縁型DCコンバーター(5V入力5V-600mA出力のDC-DCコンバーター)を使って、デジタルとアナログのグランドラインを完全に分離し、さらに低雑音レギュレーター(TPS7A4700使用)を入れて、スイッチングノイズを取り除きました。これで聴感上もノイズを判別不能にするまで追い込む事が出来ました。この絶縁型DC-DCは高周波トランスを使っており、それで入出力のグランドを分離する事が出来ます。

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どちらも秋月電子で販売されており、ここはもう本当に自作派の強い味方です。
絶縁型DCコンバーター http://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-04261/
低雑音レギュレーター http://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-06194/

全体のブロックダイアグラムは以下になります。(手書き!)
これらをコントロールするソフトウェアは、Pythonで記述しています。

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ラズパイホームラジオ ブロック図

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FMラジオ・モード 局名と周波数、受信レベル(SG)を表示。赤いボタンでプリセット局選択

FM放送波を受信するラジオ機能には、SparkFunから発売されている、Si4703搭載FMラジオチューナ評価ボードを使用しました。

Si4703は豆粒大のチップにステレオFMチューナーの機能を詰め込んだもので、内部ではDSPが使用されています。インターフェースはI2Cでラズパイからコマンドで制御します。このDSPは非常に高性能で、それによって良好な受信特性を実現しています。ただこのSparkfun製のボードは、FMアンテナ入力がヘッドフォンケーブルを利用することを前提に作られており、そのため本機のような組み込み用途ではケーブル引き回しによって高周波ノイズを拾ってしまいます。DSPフィルターの遮断特性が優れているため、ある程度の電波入力レベルがあればノイズは気にならないのですが、入力が弱い時にはその影響をもろに受けてしまいます。
SparkFunでは、アンテナにヘッドフォンケーブルを利用しないタイプのボードも出しており、そちらを現在発注中で、到着したら今のものから入れ替える予定です。

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Radiko、らじる再生モード。赤いボタンでプリセット局を選択

それで、電波によるラジオ受信に加えて、雑音の影響を全く受けないインターネット・ラジオ(Radiko、らじる他)の再生機能を追加してみました。
この機能はAirplayを利用すればパソコンから利用できるのですが、それ無しに単体で再生できる機能を加えてみました。
linux上で、Radikoやらじるを再生したり、なんと予約録音する機能までも実現するスクリプトを作って公開されている方がいらっしゃいます。本機ではそちらをありがたく利用させていただき、Pythonのプログラム中からそのスクリプトを実行制御しています。
おかげでこの機能を考えてから調査して動作させるまで、実質2~3日で実現できました。
このスクリプトではオープンソース・メディアプレーヤーのmplayerを使用しているのですが、これが非常に強力な機能を持っています。
また、OS自体のマルチタスク管理が非常に優れているので、高機能なプロセスを何の心配も無く起動・制御・終了できます。
先人たちによる、UNIXからの綿綿たる莫大な技術資産を、この数千円のラズパイボードでフルに利用できるわけです(しかも無料)。
これこそがラズパイ・linuxを使う最大のメリットと思います。
Radikoやらじるのインターネットラジオは、ノイズの影響を受けない安定性は非常に良いのですが、圧縮音源のためやや音質に難があります。どちらかというと、FM電波を良好に受診した時の方が、良い音質だと思います。そのためあえてFMラジオモードを設けています。

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AirPlay、DACモード

最後は、Apple AirPlayとDACモードです。
Airplayは、これまた強力なshairport-syncとういうオープンソースのプレーヤーがRasbian/linux上でサポートされています。このプログラムを常駐させればitunes等からAirPlay対応デバイスとして認識されます。
下はitunesで「Raspberrypi2_radio」という名前で認識されているところを示しています。

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itunesでAirPlay対応デバイスとして認識されたRaspberry pi

AirPlayでは、16bit 44.1kHzまで対応可能なので、CDと同等の音質で再生することが出来ます。
itunesの他にも、当方が愛用している高音質ソフト、Audirvana PlusでもAirPlay経由で再生可能です。
Macでは、システムサウンドの出力先にAirPlayデバイスを設定可能なので、Mac側からRadikoやらじるの再生も可能です。

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Macのitunesから、AirPlayで再生

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Mac用高音質再生ソフト、Audirvana Plusでも出力先にAirPlayを指定可能

あと、Raspberry pi のlinux OSである、Raspbianも進化が著しく、新しいPIXELではWebブラウザーもChromiumがデフォルトで使えるようになり、Flash playerプラグインを入れれば、そこからRadiko等の再生も出来るようになりました。(ややCPU負荷が高いですが)
また、VLCのようなメディアプレーヤーを使えば、普通にDAC経由で音楽再生が可能です。ハイレゾも問題ないです。
VNCもシステムで標準サポートされるようになり、リモートからのデスクトップオペレーションも非常に快適に行えます。

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VNC接続し、リモートデスクトップでVLCメディアプレーヤーを使用して音楽再生

本機の機能としては以上になりますが、ラズパイをコントローラーに使用した事で、単なるラジオにとどまらない柔軟な機能を持ったデスクトップオーディオシステムを短時間で作成する事が出来ました。本気のピュアHiFiオーディオ再生も良いですが、このようなラジオ的音質でまったりと聴くのも良いものです。特に何か作業をしながらのながら聴きには最適です。

外観の処理等は、手作りなのでメーカー製のようにきれいにはいきませんが、それなりに愛着の持てるデザイン・外観になったと思います。机の上においてこれでラジオや音楽を聴いていると、若かりし頃に深夜放送等を聴いて夜更かししていた頃のことが思い出されてきました。

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エアチェック世代の当方にとって、カセットテープは懐かしいとともに忘れられないメディアで、昔録音したテープのいくつかはしっかり保管しています。(大分捨ててしまったのはやや後悔しています。。)
あと、ナショナル(パナソニック):テクニクスのちょっと変わったカセットプレーヤーである、FMコデッキという機種を今でも持っています。もう30年以上前に買った物なのですが、動作は依然全く問題無く、なかなか良いサウンドを聞かせてくれます。
こちらはカセットだけではなく、FMラジオの機能も持っており、なんとFMワイドバンドにも対応しているので、TBS、文化放送等の新しいFM局も聴く事が出来ます。
こちらを今回作ったホームラジオBOXに接続すると、カセットテープのレトロなラジカセ風サウンドと、最新のワイドFM放送が両方楽しめるというわけです。

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Waltzで購入したカセット(リチャード・トンプソン、ボニー・レイット)と、昔のエアチェックしたゲルビッヒをコデッキで聞く

カセットテープは、もう絶滅の一歩手前状態かと思っていたのですが、どうも最近アナログレコードと共に復活の兆しがあるようです。なんと、中目黒にカセット・ミュージックテープとアナログレコードの専門店「Waltz」というお店がある事を知り、早速行ってみました。

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waltz店内:waltzホームページより借用

http://waltz-store.co.jp/

驚きました。特にカセット・ミュージックテープへのこだわりは半端無く、ロックに関してはかなりマニアックなアーチストの物までそろっています。当方の好きなリチャード・トンプソンとボニー・レイットのテープがあったのには驚愕して、購入しました。マニア向けアーチストのためか、メジャーのものよりかなり安価でした。

店内はとてもおしゃれな作りで、昔のラジカセやカセットプレーヤーも販売されており、視聴コーナもあります。
当方が訪問したのは平日だったのですが、その日は何かミュージシャンの撮影に使われたようで、その関係者でごったがえしていました。どうも悪い時に来てしまったようで、スーツを着た全く音楽に関心のなさそうな人物が棚の前で他の人と話し込んでいてなかなかそこを動こうとしません。
その棚を見たかったので「すいません、この棚を見たいのですが」と声をかけたら、面倒くさそうに当方を一瞥(なんだこいつは的な視線で)して無言で移動したのでした。
とても気分が悪くて、おしゃれな店なのですがこういったいけ好かない業界人が来る店で、あまり当方には縁がない店かな〜と思い、帰ろうとしたのですが、店主と思われる方が駆け寄ってきて「今日は撮影があってごたごたしており、本当申し訳ございませんでした〜」と声をかけてくれました。少しお話しできたのですが、先ほどの業界人とは正反対の感じの方で、正直ホッとしました。

今、インターネットでなんでも簡単に手に入れられる時代になったわけですが、やはり音楽でも本でも、実店舗で棚の中から掘り出し物を探し出す作業のワクワク感や興奮をそれ(インターネットで入手)で得る事は出来ないと思います。
カセットテープの時代には、自分でラベルに曲名を手書きでびっちり書いていて、そうやって手作りしたテープをもうすり切れるほど聴いたものでした。久しぶりにそういったテープを聴いたり、waltzに行った事で、以前の熱があった時代の記憶が蘇ってきた気がします。

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