8月18日に発売された「ラジオマニア2025」に、「FMエアチェック黄金時代のアナログチューナーを甦らせる! TEF6686を使用したアナログライクなFMチューナーの製作」という記事を書きました。

昨今のオーディオ界隈の動向で驚くのが「アナログ・メディア」の完全復活です。タワレコなどの大手ショップでは、アナログ・レコード売り場はどんどん拡張されて大変な活気です。また加えてレコードを中心に扱うユニークな個人店も非常に増えており、オーディオメーカーからはプレーヤーのハード新製品も続々と発売され、好循環を産んでいます。
さらにカセットテープも復活の兆しを見せています。大御所や新人でもカセットで新譜や旧譜のリマスターをカセットでリリースしたり、SONYウオークマンの再来を目指したような、高品位なポータブルプレーヤーが新製品で発売されており驚くばかりです。こういった背景もあってか当時のアナログプレーヤーやカセットデッキの高級機は中古市場でも大人気で、異常な高値で取引されています。
ところでこれらアナログメディアの全盛期である70年代から80年代にかけては、いわゆる「FMエアチェック」の黄金時代でした。レコードプレーヤー、カセットデッキに加えてFMチューナが極めて重要な位置を占めていて、各メーカーが鎬を削り、魅力的な製品が多数発売されていました。
当方も当時こういったFMチューナを入手し、カセットに音楽番組を録音(所謂エアチェック)して楽しんでいました。しかしながら現代においてはこの黄金時代のFMチューナーは、このアナログブームの蚊帳の外にあるといえます。中古市場では古いFMチューナーは全く人気がなく二束三文で投げ売りされています。これはなぜなのでしょうか?
まず一番の理由としては、FM放送が95MHzにワイドバンドされたことが挙げられます。これはAM放送をFMに移行する目的で拡張されたものですが、古いFMチューナーは90MHzまでしか対応していないため、このワイドバンドFMの局を受信することができません。民放の主要局がこのバンドで放送されているので、これらが聞けないのは大きなマイナスポイントです。あと古いアナログチューナーは経年劣化により周波数ずれや感度低下、音質劣化などが起こっており、再調整や修理が必要になる場合が非常に多いです。この調整や修理には専門技術に加えて各種の測定器が必要になり、これは非常に敷居が高く困難を伴います。
しかし当時のアナログチューナーはデザイン性に優れ、横型のスケールや重みのあるノブは抜群のチューニング感覚を持っています。そしてスケールやメーター類は美しい照明が施されており大変魅力的です。例えば下の写真は1974年頃に発売されたSONYのST-5150Dで、アナログのFM/AMチューナーです。当時のSONYの勢いを感じさせるクリーンかつ重厚なデザインで、ガッチリとした筐体に分厚いアルミのフロントパネルが取り付けられています。大ぶりなスイッチやノブのカチッとしたタッチが非常に心地よいです。特にグリーンの照明で浮かび上がる周波数スケールやメーターが非常に美しく、チューニング動作の意気が上がります。

今回は1976年に発売されたヤマハのアナログチューナー:CT-400の中身を、最新のデジタルDSPチップ:TEF6686に置き換えを行ってみました。CT-400は分厚いシルバーのフロントパネルに白木木目のウッドケースという美しいデザインで、北欧やミッドセンチュリー家具のようなハイセンスな佇まいがあります。

このCT-400のデザインを変えることなく、中身のみをTEF6686に置き換えを行いました。実際の改版にあたっては、以下の条件を設定し対策を行いました。
■チューニングは既存のダイヤル・スケール、ノブを使用し、アナログ感覚で行える。
→オリジナルのバリコンを精密ポテンショメーターに置き換え、高精度A/Dコンバーターで回転変化を電圧値で読み取り周波数設定を行う。

■外観デザインには変更を加えない。パネルに新たなスイッチやツマミは設けない。TEF6686の先進機能(マルチパスキャンセル、IFバンド幅可変、チャネルイコライザーなど)を利用できるようにする。
→既存のつまみ部分に新たな設定機能を割り当てる。

■上記2つを維持したまま、>90MHz以上のワイドバンドFMに対応する。
→+10MHzの周波数ワープ機能を設けてワイドFMに対応する
これらの機能は、Arduino Nanoのソフトウェアにて実現しています。受信周波数や信号レベル、S/N、マルチパス強度などはセンターメーターを置き換えた液晶ディスプレー上に表示されます。TEF6686の付加機能(マルチパスキャンセルなど)や+10MHz周波数ワープ機能の設定状態も表示されます。


ハードウェアは1枚のユニバーサルボード上に実装しています。

これらの改版によって、デザイン性に優れたFMエアチェック黄金時代のビンテージアナログチューナー:ヤマハCT-400が、現代のデジタルDSPチューナーとして蘇りました。
アナログの大型ノブ、周波数スケールによるチューニング動作はそのままに、デジタルによる安定した高精度のチューニングが実現でき、ワイドFMにも対応できました。さらにマルチパス抑制など、高度な機能も現状のデザイン・ユーザーインターフェースを壊すことなく設定・利用できています。

記事では当時のアナログチューナの魅力や、チューニングシステムの詳細やハードウェア、ソフトウェアの解説を行なっています。
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