日本リュート協会は、会報NO.36(2021年2月号)を発行いたしました。
今号は、以下の記事が掲載されています。
・カピローラのフレットの「謎」 <渡辺 広孝>
前号に掲載した、カピローラ リュートブック序文の日本語訳から、興味深いトピックをピックアプして詳細な解説を加えていきます。
第1弾は、「カピローラのフレットの謎」です。
この序文の中で最も不思議な記述である、「”arpiza”(ハープのようになる)」の謎に迫ります。
これが弦の音に「さわり」を加えるための「ブレイピン」を装着したいわゆる「ゴシックハープ」のようなサウンドを指すものなのか?
ダブルフレットやトリプルフレットの実情はどうか?
最近再現されたという「ブレイリュート」の正体とは?
これらの視点による解説に加えて、最後に現代の巨匠(オデット、ヤング)による見解も紹介しています。
・調弦さがし、ダウランドの巻 その3 <蓮見 岳人>
ドイツ在住のリュート奏者 蓮見 岳人氏による、ダウランドを演奏する際の調弦、特にフレッティングについての考察に関する3回連続の記事の最終回です。「7コースG調弦リュートにおける裏口純正三度付き、ピタゴラス調律」をチャート付きで解説し、I saw my Lady weep を題材とした誌上ワークショップの試み(カラー版の楽譜付き)を掲載しています。
・バロック・リュート低音弦の減衰・倍音成分を実測する <阿矢谷 充>
バロックリュートの低音弦に金属巻き弦を使用すると、その長いサスティーンを制御する「消音」テクニックが必要になります。このサスティーンを控えめにして量感のある低音を実現する弦としてローデット・ガット弦がありますが、安定性に難がありました。ローデット・ガット弦の音の質感と安定性の両立を目指したのが合成樹脂に金属粉を充填したAquilaのCD:ローデット・ナイルガット弦です。今回バロックリュートに張った金属巻き弦(Aquila D)とローデット・ナイルガット弦(Aquila CD/CDL)の減衰特性を実測して、データでその違いを明らかにし、さらにFFTで倍音特性を解析し音色の違いも目に見える形にしています。
またスワンネックとバスライダーの、異なるタイプのバロックリュートによる違いも測定し、その結果は非常に興味深いものになっています。
・みんなが弾けるリュート曲 <小出智子>
「最初から難しすぎるリュート曲に挫折する人を少しでも減らすために、ちょっとでも簡単で楽に弾ける曲を!」をコンセプトにオリジナル曲を掲載する連載がスタートしました。
ほっこりする作者のイラストも実に魅力的です。
・第35回 秋の会員コンサート報告
コロナの影響で春の会員コンサートが中止されましたが、今回は感染症対策を行い1年ぶりの開催にこぎつけました。記事では参加者によるコメントを掲載しています。
・新譜情報 <編集部>
昨年発売された新譜を中心に10枚の注目録音を紹介しています。
動画やFreeで聴ける音源のリンクも充実。
・理事会からのお知らせ
・添付楽譜 <米田 考>
- Partita in F-Dur Johann Anton Logy (1650 – 1721)
ロジーはボヘミアの貴族で、その死を悼んでヴァイスがトンボーを捧げたことで知られていますが、その作品はあまり広く知られてはいません。また、信頼できるCritical Editionは存在せず、信頼度イマイチのモダン譜が刊⾏されているだけです。ここでは、ウィーン国立図書館所蔵のファクシミリから新たに起こしたタブラチュアを、原典の間違いと思われる箇所の画像とともに掲載しています。