2025年1月29日に発売された「ラジオ受信バイブル2025」に、「TEF6686を使ったFMチューナーの製作」という自作記事を書きました。
TEF6686はNXP Semiconductorsより発売されている、主にハイエンド・カーオーディオ/ホームオーディオ用をターゲットにしたラジオICで、このチップが搭載されたラジオのレビューでその受信性能や高機能が高く評価され注目されています。
内部はLow-IF構成のDSPを使用したフル・デジタル処理で行われており、I2Cインターフェースからの制御で設定・動作を行います。特にデジタル処理による、FM向けマルチパス抑制機能やチャネル・イコライザーを実装しており、これらの機能はメーカー製品では超ハイエンド製品(20万円以上〜)でのみサポートされているものです。
日本のFM波はアナログ変調方式で、その音質劣化の要因として挙げられているのがマルチパスによる影響です。これは放送アンテナからの電波がさまざまなルートを通って時間遅れを伴って受信機に到達し、それらが合成されることによって不快な歪みを発生するものです。これを避けるには指向性の高い外部アンテナを使用する方法がありますが、近年はDSPのFIRフィルターでデジタル的にこれをキャンセルする手法が取り入れられています。
本機はこのTEF6686の性能を確かめるために、単体で動作するボックス型のFMチューナーにまとめたものです。TEF6686チップと外部部品をシールドケースに実装したモジュールを入手することが可能で、これをArduino Nanoのコントローラーでソフトウェア制御を行なっています。
ケースは無印良品のモップケースを使用し、前面パネルにはノイズの少ない液晶表示部とアナログのシグナルメーターを具備しています。この他マルチパス・チャネルイコライザーの設定ボタンと機能表示LEDがあり、自由な組み合わせでこれらの機能をON/OFFできます。
液晶表示部には選局した局名・周波数情報のほか、信号強度、ノイズ、マルチパス強度の表示がされます。TEF6686はIFフィルターのバンド幅を56 KHz から 311 KHz の範囲で16 種類も設定可能です。前面パネルのボタンで設定した帯域幅は液晶上部右に表示されます。
記事ではハードウェアとその実装方法、ソフトウェアの解説を行なっています。最後にマルチパス抑制機能の評価として、NHK-FM時報880Hzのトーンを受信してWaveSpectraによる歪率測定結果を掲載しています。
本機は当方が今まで作成したラジオ・チューナーの中でも非常に高い品位の再生音質が得られています。今回はFM受信専用ですが、本チップを使用したAM・短波のDX受信に特化した通信型受信機の作成も検討しています。
「ラジオ受信バイブル2025」誌は書店、アマゾンなどで入手可能です。
https://amzn.asia/d/9rIHuHv
No comments
Comments feed for this article
Trackback link: http://lute.penne.jp/thumbunder/tef6686を使った高品位・高機能fmチューナー/trackback/